港内防風雪施設設計評価マニュアル(案)とは、北海道の港湾及び漁港において強風や雪等の自然環境、就労環境の改善を目的とした港内防風雪施設の適切な設計と事業評価での定量的な評価手法に係わる考え方を整理したものです。
「マニュアルの特徴」と「定量的な評価手法の概要」を以下で紹介します。
マニュアルの特徴 | 調査から設計までの技術者を対象に | 施設整備後の風況の簡易予測を可能に |
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港内防風雪施設の定量的な評価手法を提案 |
定量的な評価手法の概要 | 温熱指標の提案 | 温冷感による作業環境の評価手法 |
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温熱指標による作業効率の評価手法 |
本マニュアル策定に際して、ご助言・ご協力いただきました皆様、特に、北海道開発局の港湾空港部港湾建設課、農業水産部水産課をはじめとした港湾関係職員の方々から多くのご助言をいただいたことにつきまして、深く感謝いたします。
マニュアル(案)は、港内防風雪施設の調査・計画・設計の各段階(図1)について、考え方や整理すべき事項を手順に沿って記述しています。また、実務に必要な最低限度の資料を各基準等から引用しているため、実務の円滑化も期待されます。
代表的な形状の施設に対して風況を計算し、「港内防風雪施設の平均風速比簡易予測図集」を作成しました(図2)。これにより、現地における大まかな風況が得られていれば、施設整備後の風況を推定できます。
設計者の判断によりますが、条件が類似している場合には、事業化前に行っていた施設の整備効果や施設規模を検討するための風況シミュレーションが不要となり、本書に掲載された内容のみで風況の簡易予測や施設規模の想定が可能になります。そのため、計画段階での作業軽減や業務費用の削減が期待されます。
各事業の事業評価に関する解説書等を見ると、港内防風雪施設に関連する整備効果の評価方法については、事業計画段階で貨幣価値を算出することが困難なものが多く見受けられます。そのため、これまでの事業計画段階の事業評価においては、港内防風雪施設整備による整備効果を定性的な説明とする場合や作業者等からのヒアリングを基に便益計測する事例がありました。
そのため、当研究所では、港内防風雪施設の整備効果である作業環境及び作業効率に関して、事業計画段階で定量的に評価できる手法を研究開発し、マニュアル(案)で提案することとしました。
人間の温熱感覚を左右するのは、人体と環境との間の熱交換の結果である熱収支量です。この熱交換プロセスには、気温や風速などのいくつかの温熱要素があり、温熱環境を評価するために、これらの要素を組み合わせてできた変量を温熱指標と呼びます。当所の研究から、いくつかの温熱指標について、寒冷環境下における温熱心理を最もよく表すものを調べました。その結果、寒冷環境における凍傷予防のために提案された実験的指標であるWCI (Wind Chill Index)を提案することとしました。
温熱指標の有効性を、温熱心理である温冷感や快適感等と各温熱指標値との相関性や実用性で判断した結果、入力値が風速と気温のみで計算方法も簡便なWCIが有望であると考えられ(図3)、北海道開発局で適用を試みているWCIの有効性を実証することができました。
作業効率に関する被験者実験から、作業能力は暴露時間とともに低下傾向を示し、温熱環境の他、暴露時間にも大きく影響することが分かりました。また、実用性を考え、温熱環境を表す指標値と暴露時間のみをパラメータとした作業効率推定法を開発することができました。